[Category] 作家別:あ行

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『箱庭図書館』乙一

読者からの投稿作を乙一がリメイク。異色の企画短篇集。

箱庭図書館箱庭図書館
(2011/03/25)
乙一

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完全オリジナル作品ではないということで、評価が分かれているようですね…。まぁこれはこれで、企画モノとしてはありなんじゃないでしょうか。

私にとっての乙一作品の魅力はやはり独創的な設定や展開なので、そこが他人任せなのは残念ではありますが、投稿作のどこをどう使うかを決めるセンス、欠点をカバーして作品として仕上げる能力は、さすがだなと思いました。
元の作品は「オツイチ小説再生工場」のときに読んでみたのですが、どれも最後まで読みきるのはしんどかった記憶があるので…。プロとアマの差は大きいです。
あとがきに書かれているリメイクポイントや、ビフォア/アフターで読み比べてみると、よくわかると思います。

単純に読み物として面白かったかと聞かれると、普通…なんですけどね。いつものクオリティを期待して読んだ人は、ちょっと肩すかしを食らうかもしれません。
私は「ホワイト・ステップ」と「青春絶縁体」が好きでした。どちらも会話のシーンが秀逸です。


リメイク前の投稿作は下記のサイトで読めますよ。

箱庭図書館 特設サイト  http://renzaburo.jp/8528/

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:あ行] | 2011.04.22(Fri) PageTop

『あるキング』伊坂幸太郎

野球界の王となるべくして生まれてきた、一人の男の物語。

あるキングあるキング
(2009/08/26)
伊坂 幸太郎

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最弱プロ野球チーム「仙醍キングス」の熱狂的なファンである両親に育てられた、王求(おうく)。王求が野球をはじめるのも、すぐに才能が開花するのも、両親からすれば当然のことなのでした。なぜならプロ野球選手として仙醍キングスに入団し、雪辱を果たすのが彼の宿命だから。
王求が生まれた日の出来事から始まり、章を追うごとに1~3才ずつ成長していく、伝記風フィクションといったところです。

両親のあまりの執着ぶりがジワジワと怖くなっていく前半はわりとおもしろく読めたのですが、後半は失速してしまいました。
何かありそうな登場人物が何人も出てくるのに、いまいち活かしきれていない気がするのですよね。「彼は後々大きく関わってくる」云々と書かれてあるのが原因かもしれませんが。伊坂作品の大きな魅力の一つは、ふとしたところに伏線が張られてあって、それらを鮮やかに回収する手腕にある、と思っているので、今回それがなかったのが残念でした。
また、王(あるいは天才)であることの苦悩を描こうとしているように見えて、実際はあまり伝わってこなかったのも残念。それは王求の思考がほとんど明かされないせいなのですが、あくまでも”自伝”ではなく”伝記”だから仕方ないということなのかもしれません。

個人的な反省点としては、事前に『マクベス』を読んでおくべきだった!ということ。シェイクスピアは好きなんですが、悲劇は好きでないので『マクベス』は未読なのです…。
王求=マクベス、両親=マクベス夫人、というくらいしかわからなくて、読んでいればもっと楽しめたんだろうなぁと。

それにしても、伊坂さんの本を読んだのは(アンソロジーを除けば)かなり久しぶりです。
好きな作家を聞かれれば1番か2番には名前を挙げていたくらいだったのですが、『モダンタイムス』がどうもダメで、さらには作風が変わったらしいとの噂も聞こえてきて、最近はすっかり足が遠のいてしまっていたのでした。ただファン根性で新刊が出たら買ってはいたので、完全に積読状態(^^;
これはいかんと一念発起して、やっと読み始めました。本当は『オー!ファーザー』か『バイバイ、ブラックバード』を読みたかったのですが、とりあえず刊行順に。次は孫悟空か…なるべく早く読もう。

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:あ行] | 2010.11.25(Thu) PageTop

『背表紙は歌う』大崎梢

出版社営業の仕事も板についてきた井辻くんが5つの謎に挑みます。

背表紙は歌う (創元クライム・クラブ)背表紙は歌う (創元クライム・クラブ)
(2010/09/11)
大崎 梢

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井辻くんシリーズ第二弾。ちなみに正確には〈出版社営業・井辻智紀の業務日誌〉シリーズというらしいです。な、長い(笑)

「ビターな挑戦者」
取次会社で初めて会った男に暴言を吐かれた井辻。その男は何故そんな態度を取るのか?
タイトル通りのビターなお話でした。デビル大越の登場がこれっきりだったのがもったいなかったなぁ。また出てきてほしいです。
取次といえば、私はいつもココで新刊チェックさせてもらってます。

「新刊ナイト」
新刊発売の書店まわりにトラブルの予兆が。その作家に会いたいという書店員の思惑とは?
自伝を書くってかなり勇気がいることですよね。ミステリとしては少し物足りなかったですが、身を削って作品を生み出す作家魂が伝わってきました。
文学作品のヒント、私はわりとすぐわかりました(^^

「背表紙は歌う」
ベテラン営業の女性が気にかける、地方の本屋で起きているトラブルの原因とは?
いいタイトルですね。私も手芸好きなので、本屋さんで手芸本が並んでいるのを見るだけでしあわせな気持ちになります。
簡単に解決する問題ではなさそうですが、最後にほっとさせてくれるいいお話でした。
私の中で真柴株、ぐんぐん上がってます。

「君とぼくの待機会」
有名文学賞の候補が発表された。ところが受賞作は決まっているとの噂が広まって…。
本好きとしては、文学賞の裏事情はぜひ知りたいところ。楽しく読みました。出来レースを疑う声に対し、気難しい審査員の先生方を説き伏せる方がよっぽど難しいという反論に、おおいに納得(笑)
ところで文学賞メッタ斬り!シリーズってもう出ないのかしら?

「プローモーション・クイズ」
書店員に新刊の推薦コメントをお願いしたら、コメントと共になぞなぞが返ってきた!
書き下ろしのおまけみたいなお話ですが、おもしろかったです。なぞなぞを書いて送ってきたのは、もちろんあの子。勝ち気なところがやっぱり苦手だわ~(^^;


真柴とのお約束「ひつじくん」「井辻ですけど」のやり取りが、じわじわおもしろくなってきました。どんな流れで言われても即座に訂正する井辻くん。やるなぁ。

本絡みの日常系ミステリという括りでは成風堂書店シリーズと同じなのですが、取次だったり、文学賞だったり、出版社ならではの視点で描かれていて、本好きの好奇心をおおいに刺激してくれます。キャラクターも含めて、私はこちらのシリーズの方が好きですね。
暗い話題も多い出版業界。厳しい現実を受け止めつつも、自分にできることを精一杯こなす人たちが素敵です。その人たちを支えているのは”いい本を出したい”という思い。書店員だった大崎さんだからこそ描けるものがあると思ってます。
私は普段は図書館で借りることが多いですが、いいと思った本はあらためて買うようにしていますよ。

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:あ行] | 2010.10.23(Sat) PageTop

『ZOO』乙一

読んだ瞬間に世界を作ってしまう吸引力にあらためて感服。

ZOO 1 (集英社文庫)ZOO 1 (集英社文庫)
(2006/05/19)
乙一

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ZOO 2 (集英社文庫)ZOO 2 (集英社文庫)
(2006/05/19)
乙一

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再読です。久しぶりに乙一の本読みたいなぁと、2ヶ月くらいかけてちまちま読み返しました。
特殊な設定の話が多いだけに触りは覚えていても、結末がどうだったか忘れていたものがほとんどで、けっこう楽しめました。
白乙一か黒乙一かで言ったら明らかに黒寄りなんだけど、せつなさだったり感動だったりの要素を多分に含んでいるのが、黒の代表『GOTH』との違いかと。

カザリとヨーコ
うーん、黒い(笑)カザリもそうだけど、飴と鞭で主人公を翻弄する作者がもう。
めちゃくちゃ不幸なのに妙に前向きなヨーコがおもしろいです。

SEVEN ROOMS
これが一番印象に残っていて読みたかった話。好きです。
乙一版『CUBE』という感じで、グロいシーンもあるけど、全体的にせつなさが漂っているのがいい。

SO-far そ・ふぁー
完成度はそれほど高くはないのだけど、最後のオチをまったく覚えていなかったので、純粋におもしろかった。

陽だまりの詩
いい話です。これが一番好きっていう人は多そうですね。

ZOO
病んでる主人公の行動から目が離せません。

血液を探せ!
ブラックコメディなんですが、あんまりおもしろくないです…。

冷たい森の白い家
めちゃくちゃグロテスク。なのに幻想的で、綺麗なものを見ているような気分にもなるし、こういうのを書けるのはさすが乙一というかんじ。

Closet
うーん、オチがあんまり…。

神の言葉
映像化に向いてそうな話ですよね。映画『ZOO』にこれも入れてよかったのでは。

落ちる飛行機の中で
コメディ系は相性悪いみたいで、あんまりおもしろく感じないんですよね…。

むかし夕日の公園で
文庫版だけのボーナストラック。最後の一言が秀逸!


つい先日、世にも奇妙な物語が人気作家とコラボレーションしていて、乙一作品こそそういうの向いてるのになぁと思いながら見てました。安達寛高名義でもなんでもいいので、オリジナルの短編ドラマやってほしいです。

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:あ行] | 2010.10.15(Fri) PageTop

『ブレイクスルー・トライアル』伊園旬

このミスって短所よりも長所を評価するようにしているらしいです。なんとなく納得。

ブレイクスルー・トライアル  ~第5回『このミステリーがすごい!』大賞 大賞受賞作~ブレイクスルー・トライアル ~第5回『このミステリーがすごい!』大賞 大賞受賞作~
(2007/01/11)
伊園 旬

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ブレイクスルー・トライアルとは、最新のセキュリティシステムが完備された研究施設に、物理的に侵入・突破できるかを競うイベントのこと。学生時代の親友に誘われイベントに参加することになった男の話をメインに、宝石強盗事件の犯人グループや、それを追う私立探偵の話などが絡んできます。

非現実的な設定ながら、面白くなりそうな要素がいっぱい詰まっているように思えます…が、それらが全くと言っていいほど活かされておらず、かなり貧弱な仕上がりになっていました。著者がやろうとしていることはなんとなくわかるんです。ただ、絶対的に文章力・表現力・構成力が足りていないんですよねぇ。
軽妙洒脱な文体を狙っているわりには粗が目立ち、つっかえつっかえ読まないといけないので、とにかく疲れました。また、無茶な設定や展開を納得させるだけの説得力もなければ強引さもないので、終始モヤモヤするはめになります。
それでもキャラクターが魅力的ならまだ救いようがあるのですが、ほとんどの登場人物が何のために出て来たんだかという印象で。途中で語り手がころころ変わり、そのたびに一人称だったり三人称だったりするので、どういう視点で読めばいいのかもわかりませんでした。

もっと実力があれば面白い作品になっていただろうに、残念です。

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:あ行] | 2010.04.01(Thu) PageTop


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