[Category] 作家別:た行


『煌夜祭』多崎礼

2012年ベスト本の記事でも少し触れていますが、書き下ろし短編つきの文庫版が出たので、再読しました。

煌夜祭 (中公文庫)煌夜祭 (中公文庫)
(2013/05/23)
多崎 礼

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生物も住めぬ死の海に浮かぶ十八諸島。“語り部”たちが島々を巡り集めた物語を語り明かすため、年に一度、冬至の晩に開かれる煌夜祭。今年もまた、“語り部”が語り始める。人を喰らう恐ろしくも美しい魔物の物語を。夜が更けるにつれ、物語は秘められた闇へ…。第2回C・NOVELS大賞受賞作に書き下ろし短篇「遍歴」を収録。
(「BOOK」データベースより)


世界観が肝となるハイ・ファンタジーにおいて、この話の設定はなかなか面白いです。
王の住む島を中心に3つの同心円(輪界)を描く形で島々が点在し、第一から第三輪界は各々の周期で周回しています。海は人体に有害なので、日に何度か吹き上げる蒸気を利用した蒸気船で島間の行き来をするしかありません。
情報は金にも等しく重宝され、そのために”語り部”が存在するというわけです。

語り部が順に語りを披露するうち、その奥に隠された物語が徐々に明らかになっていく様に、ページを繰る手が止まりませんでした。
一話一話それぞれに面白く、また全体を通して読むと胸に迫るものがあります。いい物語に出会えたなぁという純粋な喜びを感じさせてくれる本ですね。
時々妙に言葉が軽いのが気になりましたが(〜とゆう、等。”語り”の中だからギリギリ許容範囲か)、デビュー作にしては完成度が高くて驚きです。他の作品も読んでみたくなりました。


ここから先は、個人的に内容や疑問点を整理するためにまとめたものです。盛大にネタバレしていますので、既読の方のみで。

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Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:た行] | 2013.10.23(Wed) PageTop

『13階段』高野和明

死刑囚の冤罪を晴らすという困難な依頼を受けたのは、元刑務官と前科持ちの青年。処刑までの時間はあと僅か、二人は真実に辿りつけるのか。

13階段 (講談社文庫)13階段 (講談社文庫)
(2004/08/10)
高野 和明

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評判通りの面白さ。久しぶりに先が読めないドキドキ感を味わいました。
タイトルの「13階段」が、処刑場の俗称というだけでなく、様々なところで印象的に使われているのが上手いですね。
これがデビュー作だそうですが、二転三転するストーリーといい、かなりの力作であることは確かです。

死刑囚が主人公なのかと思っていたら、違いました。
刑務官として犯罪者たちと向き合ってきた南郷と、殺人罪で服役したのち仮釈放された三上純一という、正反対とも言える立場の二人を中心に話が進んでいきます。
南郷と純一の、適度に距離を置いてお互いを尊重しあう関係が心地よかったです。

主な謎は4つ。1つめは、死刑囚・樹原は無実なのか。2つめは、冤罪だとすると真犯人は誰か。3つめは、樹原を救いたいという依頼人は誰か。4つめは、純一の過去の家出事件で何があったのか。
南郷たちは2つめの謎を解明すべく調査をするわけです。ちょっと冤罪だって決め付けるのが早過ぎるのでは?とは思いましたが、依頼の趣旨からして、そこがブレると何もできなくなるからかなと納得しました。
これ以上の感想は・・・どう書いてもネタバレになっちゃいそうなので、追記に。

映画は未見です。
私が読んだのは文庫本の方で、解説が宮部みゆきだったんですが、そこで「映画化された『13階段』を高野さんは気に入ってなかった」とかなんとかぶっちゃけちゃってるのが、いろんな意味でドキドキしました…。映画化で散々痛い目を見ているはずの宮部さんが書いてるっていうのがまた(苦笑)

決して明るい話ではないですが、ところどころでクスっと笑えるようなくだりがあったりして、重いながらも読みやすかったです。
特に南郷兄弟のエピソードはお気に入り。お兄さんの飄々とした態度とセリフはよかったなぁ。
全員にとって大団円というわけにはいきませんでしたが、そこもまた現実の厳しさを象徴していて、なかなかの終わり方だったと思います。

※ここから先はネタバレです。

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Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:た行] | 2011.07.29(Fri) PageTop

『ロード&ゴー』日明恩

前代未聞の救急車ジャック事件が発生。犯人の目的とは?

ロード&ゴーロード&ゴー
(2009/10/21)
日明 恩

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ポップな装丁も影響して、てっきり救急隊の日常を描いた普通のお仕事小説だと思っていた私(^^; なので突然救急車がジャックされたときは、かなり驚きました。
救急車に乗っていたのは、機関員(運転手)の生田、救急救命士の森、救急隊長の筒井の3名。犯人に次々と目的地まで走らされながら、一人も犠牲者を出したくないと細部まで神経を遣っている様がひしひしと伝わってきます。
犯行に至った経緯にいまいち説得力がないなぁというのと、犯行自体が尻すぼみに終わっているのがちょっと残念でしたが(身代金は結局なんだったんだ…)、救急のあり方とは、なんてことを考えさせられる話でもありました。

とはいえ、エンターテインメント小説です。走りつづける救急車を舞台しているだけにスピード感がありますし、なにより登場人物がみんな魅力的。
運転技術は抜群だけどガサツで口の悪い生田は、元暴走族で愛妻家でもあり…ってあまりにも設定がおいしすぎるのですが(笑)悔しいけど惚れました。めちゃくちゃかっこいいです。まぁでも生田を賞賛する描写はちょっと多すぎでしたね…。
真面目な委員長タイプのモリエリちゃんも好きでした。最初は頭でっかちで融通の利かなかったのが、だんだん生田に感化されてきて、でもやっぱり真面目なところがイイ。
いつも人を思いやっている筒井もよかったですし、常に冷静沈着な鬼平も格好よかった。無線マニアからコマンダーなんて呼ばれちゃってるのがウケました。

スリリングな展開の合間に、テレビ局で燻っている青年の話と、母親との関係に悩む女子高生の話が時々出てきます。前者は正直いらなかった気もするのですが(この話では完全に悪役に見えるマスコミも、いろいろ苦労してるってことが言いたかったのかな?)、後者の女子高生・真琴の話はなかなかよかったです。

消防隊や救急隊の仕事って、知っているようでいて意外と知らないことだらけです。そもそも消防隊と救急隊の関係もよくわかっていなかったり…。機関員という運転専門の人がいるだとか、救急車に乗るのは3名だけだとか、いろいろと勉強になりました。
こういうサスペンス仕立てじゃなくて、最初に勘違いしたみたいに普通のお仕事小説でもよかったな、と思ったりも。モリエリちゃんのその後とか、生田と妻の結婚に至るまでの話とか、ぜひ読んでみたいです。

この本単体で読んでもまったく問題はありませんでしたが、生田はもともと別のシリーズの脇役だったようです。妙に関係ない人の名前が次々出てくるなぁと思っていたら、そういうことかと納得。それらを読む楽しみができて、嬉しい驚きでした。
ついでに言うと日明恩(たちもり めぐみ)さんて『それでも、警官は微笑う』の方だったんですね。一時期けっこう平積みされていて気になってたんです。お名前の読み方もわかったことだし、今後チェックしていきたいと思います。

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:た行] | 2010.10.25(Mon) PageTop


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