[Archive] 2011年04月


『箱庭図書館』乙一

読者からの投稿作を乙一がリメイク。異色の企画短篇集。

箱庭図書館箱庭図書館
(2011/03/25)
乙一

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完全オリジナル作品ではないということで、評価が分かれているようですね…。まぁこれはこれで、企画モノとしてはありなんじゃないでしょうか。

私にとっての乙一作品の魅力はやはり独創的な設定や展開なので、そこが他人任せなのは残念ではありますが、投稿作のどこをどう使うかを決めるセンス、欠点をカバーして作品として仕上げる能力は、さすがだなと思いました。
元の作品は「オツイチ小説再生工場」のときに読んでみたのですが、どれも最後まで読みきるのはしんどかった記憶があるので…。プロとアマの差は大きいです。
あとがきに書かれているリメイクポイントや、ビフォア/アフターで読み比べてみると、よくわかると思います。

単純に読み物として面白かったかと聞かれると、普通…なんですけどね。いつものクオリティを期待して読んだ人は、ちょっと肩すかしを食らうかもしれません。
私は「ホワイト・ステップ」と「青春絶縁体」が好きでした。どちらも会話のシーンが秀逸です。


リメイク前の投稿作は下記のサイトで読めますよ。

箱庭図書館 特設サイト  http://renzaburo.jp/8528/

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:あ行] | 2011.04.22(Fri) PageTop

『鶴屋南北の恋』領家高子

歌舞伎に命を最後の一滴まで注ぎ込んだ鶴屋南北の晩年の恋とは。

鶴屋南北の恋鶴屋南北の恋
(2009/07/18)
領家 高子

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歌舞伎に詳しくない人でも「東海道四谷怪談」という演目は聞いたことがあるはず。その本を書いたのが、遅咲きながら数々の作品を世に残し、大南北とも呼ばれた、歌舞伎狂言作者の四代目鶴屋南北です。
深川芸者の鶴次は、十年来の男の頼みで、鶴屋南北のもとに妾奉公にあがることに。恋人が自分を売ったことに傷つきながらも、南北の深い眼差しに圧倒され魅了された鶴次は、これまでの暮らしを捨てて付いて行く決心をするのでした。
数々の逆境に喘ぐ歌舞伎界で命の限り走り続けた鶴屋南北と、最期まで側で見守った鶴次。粋な男と女の一世一代のごっこ遊びが心に染みます。

読んでいるあいだ何度も溜息をつきました。それくらい魅力的なセリフ、シーンが多いのです。
江戸時代なんて詳しくないし、歌舞伎もさっぱりわからない、なにより年寄りの恋愛ものなんてみたくない、という私がこの本を受け入れられたのは不思議でしょうがありません。鶴次と同じく、大南北に魅せられてしまったのでしょう…。
七十過ぎのおじいちゃんですよ。平均寿命が違うので、今の感覚だと九十歳くらいなわけです。なのに、なんでこんなに艶っぽいのか。
鶴次がまたいい女なのです。鶴次のサバサバした言動と情の深さがあってこそ、いつ崩壊してもおかしくない浮世離れした暮らしが続けられたに違いありません。
そして大南北を生き長らえさせるために全てを捧げた男、重兵衛。頭脳となり手足となって南北を支え続けた彼は、もう一人の鶴屋南北なのですね。タイトルは『大南北の恋』でも『源さんの恋』でもなく、『鶴屋南北の恋』でなくてはならないわけです。

普段読んでいるものとは一線を画す、大人の読み物でした。堪能しました。

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:ら行] | 2011.04.18(Mon) PageTop

『文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ!』ジャスパー・フォード

メタ文学+SF+刑事モノというありそうでなかった痛快ジェットコースター小説。

文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ!文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ!
(2003/10)
ジャスパー フォード

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物語の舞台は1985年のイギリス。ただし、歴史や文明の発達の仕方がちょっと違います。クリミア戦争が今なお続いていたり、遺伝子操作で生まれたドードーが人気のペットだったり、ジェット機の代わりに飛行船が飛んでいたり、『ジェイン・エア』がハッピーエンドでなかったり。
警察とは別に特殊事件を専門的に扱う特別捜査機関(スペックオプス)があり、主人公サーズデイ・ネクストはそこの文学刑事局(リテラテックス)に務めています。ちなみにスペックオプスには時間警備隊(クロノガード)なんて部署もあったりします。
ディケンズの直筆原稿が何者かに盗まれたところから、二次元と三次元、さらに四次元もが交差する複雑な事件が始まっていきます。

序盤は世界観を理解するのが大変で、なかなか物語に入っていけなかったのですが、話が進むにつれて加速度的に面白くなっていき、後半はイッキ読み。
英文学に詳しくなくても大丈夫です。私自身、作家名くらいは聞いたことがあるものの知らない作品ばかりで、最初はどうしようかと思いました。でも作中でざっと説明はされますし、いざとなればネット上にあらすじや解説がありますから(ただし『ジェイン・エア』は結末が異なる設定なので要注意ですが)。あとは、訳者あとがきを先に読むと設定を理解しやすいかもしれません。
主な登場作品としてあげられているもの以外にも、文学にまつわる小ネタやお遊びがたっぷりあるようなので、わかる人が読めばかなり面白いはず。残念ながら私はほとんどわかりませんでしたが(^^;

舞台設定もさることながら、キャラクターもとってもユニークなんです。敵味方どちらも変人率高し(笑)
サーズデイは元警察官でクリミア戦争での戦闘経験もあるタフな女性ですが、10年前に別れた恋人を忘れられないなんて弱気な一面も持っています。
元クロノガードであるサーズデイの父親は、時間を自由に移動できるという凄い能力の持ち主ですが、空気を読めないのが玉に瑕。事件の引き金となる発明をしたマイクロフト叔父さんもかなりいい味出してます。変な発明品の数々もおもしろかったなー。
私はサーズデイの上司ヴィクターがお気に入りでした。

これ映画化しても絶対おもしろいと思いますね。文学がテーマってマニアックだから難しいかな??
ともかく『ジェイン・エア』を読んでみたくなりました。正直ストーリー自体にはあまり興味をそそられないのですが、このシーンの裏ではあんなことが…とか考えるのが楽しそう。

シリーズ3冊目まで出ているようです。
今巻で回収されなかった伏線もあったので、早く続きを読まなくちゃ!

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:海外] | 2011.04.14(Thu) PageTop

『レヴォリューションNo.3』金城一紀

君たち、世界を変えてみたくはないか?

レヴォリューション No.3レヴォリューション No.3
(2005/04/28)
金城 一紀

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再読です。『レヴォリューションNo.0』を読んでやっぱり読み返したくなったので。
最初の単行本の印象が強いんですが、私はこの新装版がお気に入り。どれが誰なんだろうって考えるのも楽しいです。
あらためて読むと、デビュー作だけあって青いというかなんというか…若さに溢れたヘンな勢いがあって、シリーズの中ではやっぱりこれが一番好きですね。

自他共に認めるオチコボレ男子校の生徒達が、優秀な遺伝子を取り込むべく(?)近所のお嬢様学校の学園祭になんとか潜り込もうと画策する、というのが表題作。その他、卒業旅行費の奪還作戦「ラン、ボーイズ、ラン」、ストーカーから美女を守る「異教徒たちの踊り」と、どの話もおもしろいです。
ザ・ゾンビーズはおバカな発想とフットワークの軽さも魅力ですが、なにより男の友情っていいなぁと思わせてくれるんですよね。ヒロシのお見舞いに行って皆がさっと定位置につく様子とか、わざと負ける方に賭けて夕食を奢るとか、さりげない優しさにグッときます。最弱のヒキを持つ男・山下がミスしたときの皆の反応も素敵ですし。

余談ですが、舜臣の「(ヒロシが首相になったら)SPになってやるよ」みたいなセリフにニヤニヤしちゃいました。後に映画『フライ,ダディ,フライ』で舜臣を演じた岡田君が『SP』やるわけで、なんだか偶然とは思えないですね。

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:か行] | 2011.04.06(Wed) PageTop


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