[Archive] 2012年07月


『コロヨシ!!』三崎亜記

掃除がスポーツに、と一見ユーモア小説のような設定ですが、実際は大真面目な青春小説なんだから驚きです。

コロヨシ!! (角川文庫)コロヨシ!! (角川文庫)
(2011/12/22)
三崎 亜記

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藤代樹は「掃除部」に所属している高校2年生だ。芸術点と技術点を競う競技「掃除」は、国家の統制下に置かれているマイナースポーツだった。幼い頃に祖父の教えで「掃除」を始めた樹は、昨年の州大会新人戦で優勝するほどの腕前。だが、目標を見出せず、どこか冷えた態度で淡淡と「掃除」を続けていた。しかし謎の美少女・偲の登場により、彼に大きな転機が訪れ―。物語の錬金術師・三崎亜記が放つ、前代未聞の奇想青春小説。(「BOOK」データベースより)


舞台は日本のようなそうでないような、架空の世界。
西域、居留地といったキーワードは三崎作品ではお馴染みなんだそうですが、私にとっては初めての三崎ワールド。それに加えて掃除の専門用語なども多く、馴染むまでに結構苦労しました。

競技としての掃除で扱うのは、もちろん本物のゴミではなく、羽子板の羽根のような塵芥。人気がないマイナースポーツということで地味なのかなと思えば、実際はフィギュアスケートのような魅せるスポーツなんです。初っ端から掃除部が実演する場面があるので、掃除がどんなものかはすぐにわかります。
部員集め、大会に向けての練習、挫折、特訓…と部活モノの要素はすべて満たしつつ、"活動制限スポーツ"の背景にある国(政府)についても描いていくので、とにかく盛り沢山です。盛り沢山すぎて読むのがけっこうしんどかったり…。スポーツ小説のふりをしていますが、作者が本当に書きたいのは歪んだ政治機構の方なんじゃないかという気もしてきます。
夏の大会での各自の特性を活かした試合はとても良かったですし、こういう(エキシビジョンや添え舞いも含む)掃除のシーンをもっと見たかったのですけどね。綿密な設定のおかげで掃除以外の部分も面白くはあるのですが、主人公の樹が何かにつけぐるぐると思い悩むので、なかなかテンポ良く読み進めることができないのが残念でした。
掃除部の面々や行きつけのお店の人たちは皆キャラが立っていて面白いです。ただ、一番の変人である顧問の言動は全く笑えず、ヒロイン(だよね)の偲がどうにも好きになれないので、中盤以降はがっくりと読むペースが落ちてしまいました。

6章を読んでいるあたりから、まさか…と嫌な予感はしていたんですが。この1冊では全然終わらないんですね…。続編が出ているのは知っていたけど、ここまで何もかも持ち越すとは。
結局、解決した謎は父親のことくらいで、この国の封印された歴史、政府の思惑、偲のこと、大介のこと、等々かなりモヤッと感が残ります。続編ですっきり解決してくれるかというとそうでもなさそうなので、いまいち読む気力が…。

なんだか否定的なことばかり書いてしまいましたが、この世界観はけっこう好きです。
うまくいえないけど、この本で描かれていない外側にもきちんと世界が存在している感じ(それも地続きで当たり前のように)がすごくします。それは過去の出来事についてさらっと書かれていたり、肩車スポーツ部なんてネタを惜しげもなく使い捨てているところからも感じられます。
そういうのを含めての三崎ワールドなのかな、となんとなく思いました。他の作品もずっと気になっていたので、挑戦してみたいです。

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:ま行] | 2012.07.11(Wed) PageTop

『パラダイス・ロスト』柳広司

ついに結城中佐の過去が明かされる?!シリーズ第3弾。


パラダイス・ロストパラダイス・ロスト
(2012/03/24)
柳 広司

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大日本帝国陸軍内に極秘裏に設立された、スパイ養成学校“D機関”。「死ぬな。殺すな。とらわれるな」―軍隊組織を真っ向から否定する戒律を持つこの機関をたった一人で作り上げた結城中佐の正体を暴こうとする男が現れた。英国タイムズ紙極東特派員アーロン・プライス。だが“魔王”結城は、まるで幽霊のように、一切足跡を残さない。ある日プライスは、ふとした発見から結城の意外な生い立ちを知ることとなる―(『追跡』)。ハワイ沖の豪華客船を舞台にしたシリーズ初の中篇「暗号名ケルベロス」を含む、全5篇。
(「BOOK」データベースより)


3作目にしてちょっとマンネリ化してきた感はあります。それでも話の中に潜むスパイや結城中佐の影を見つけてニマニマしつつ、一気に読み終えました。
記者が結城の過去を探る『追跡』が一番おもしろかったかな。最後の終わり方も清々しくてよかったです。
『誤算』『失楽園』はもう一捻り欲しかった。D機関の人たちの凄さはもう十分わかっているので、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなっているんですよね(^^;
『暗号名ケルベロス』は初の中編ということですが…う〜ん、あえて前後編にするほどの内容ではないかも。

前作からもう2年以上経つんですね。シリーズ物なんだけど、前作までの内容を全く覚えていなくても気軽に読めるところがいいです。というか読み終わったそばから忘れていくのはやはりスパイの仕業…。

今やなんでもかんでも実写化されてますが、このシリーズも当然のごとく目をつけられてるんでしょうねぇ。
真っ当なスタッフ・キャストなら観てみたい気もします。全6話くらいで。

Trackback [1] | Comment [4] | Category [作家別:や行] | 2012.07.01(Sun) PageTop


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