『コロヨシ!!』三崎亜記

掃除がスポーツに、と一見ユーモア小説のような設定ですが、実際は大真面目な青春小説なんだから驚きです。

コロヨシ!! (角川文庫)コロヨシ!! (角川文庫)
(2011/12/22)
三崎 亜記

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藤代樹は「掃除部」に所属している高校2年生だ。芸術点と技術点を競う競技「掃除」は、国家の統制下に置かれているマイナースポーツだった。幼い頃に祖父の教えで「掃除」を始めた樹は、昨年の州大会新人戦で優勝するほどの腕前。だが、目標を見出せず、どこか冷えた態度で淡淡と「掃除」を続けていた。しかし謎の美少女・偲の登場により、彼に大きな転機が訪れ―。物語の錬金術師・三崎亜記が放つ、前代未聞の奇想青春小説。(「BOOK」データベースより)


舞台は日本のようなそうでないような、架空の世界。
西域、居留地といったキーワードは三崎作品ではお馴染みなんだそうですが、私にとっては初めての三崎ワールド。それに加えて掃除の専門用語なども多く、馴染むまでに結構苦労しました。

競技としての掃除で扱うのは、もちろん本物のゴミではなく、羽子板の羽根のような塵芥。人気がないマイナースポーツということで地味なのかなと思えば、実際はフィギュアスケートのような魅せるスポーツなんです。初っ端から掃除部が実演する場面があるので、掃除がどんなものかはすぐにわかります。
部員集め、大会に向けての練習、挫折、特訓…と部活モノの要素はすべて満たしつつ、"活動制限スポーツ"の背景にある国(政府)についても描いていくので、とにかく盛り沢山です。盛り沢山すぎて読むのがけっこうしんどかったり…。スポーツ小説のふりをしていますが、作者が本当に書きたいのは歪んだ政治機構の方なんじゃないかという気もしてきます。
夏の大会での各自の特性を活かした試合はとても良かったですし、こういう(エキシビジョンや添え舞いも含む)掃除のシーンをもっと見たかったのですけどね。綿密な設定のおかげで掃除以外の部分も面白くはあるのですが、主人公の樹が何かにつけぐるぐると思い悩むので、なかなかテンポ良く読み進めることができないのが残念でした。
掃除部の面々や行きつけのお店の人たちは皆キャラが立っていて面白いです。ただ、一番の変人である顧問の言動は全く笑えず、ヒロイン(だよね)の偲がどうにも好きになれないので、中盤以降はがっくりと読むペースが落ちてしまいました。

6章を読んでいるあたりから、まさか…と嫌な予感はしていたんですが。この1冊では全然終わらないんですね…。続編が出ているのは知っていたけど、ここまで何もかも持ち越すとは。
結局、解決した謎は父親のことくらいで、この国の封印された歴史、政府の思惑、偲のこと、大介のこと、等々かなりモヤッと感が残ります。続編ですっきり解決してくれるかというとそうでもなさそうなので、いまいち読む気力が…。

なんだか否定的なことばかり書いてしまいましたが、この世界観はけっこう好きです。
うまくいえないけど、この本で描かれていない外側にもきちんと世界が存在している感じ(それも地続きで当たり前のように)がすごくします。それは過去の出来事についてさらっと書かれていたり、肩車スポーツ部なんてネタを惜しげもなく使い捨てているところからも感じられます。
そういうのを含めての三崎ワールドなのかな、となんとなく思いました。他の作品もずっと気になっていたので、挑戦してみたいです。

Trackback [0] | Comment [0] | Category [作家別:ま行] | 2012.07.11(Wed) PageTop

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